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2022-02-28

そろばん学習を勧める理由
  元大阪府立大学先端科学研究所 教授 林 壽郎

 「ソロバンを習うと頭が良くなる」と言われています。これは、頭の良くなる薬を飲むかわりにソロバンを習うということではありません。  ソロバンを習う目的は「正確で早い計算ができる能力を身につけること」にあるのは言うまでもありません。しかし、若いソロバン学習者が手に入れるのは果たしてそれだけでしょうか。
「計算」という実用面だけならば、もっと手軽で頭を使わなくても良い電卓があります。「今さら難しいソロバンを習わせる暇があれば学習塾へ行かせます」と言われるお母様達もおられます。 そういうお母様達にとくに申し上げたいのです。
ソロバンを学習するとなぜ頭が良くなるのでしょうか。大脳の働きについての研究が進み、今まで解らなかったことが次第に明らかにされてきました。 それによると、人間の知能を高めるためにはできるだけ早い時期から感覚が鋭くなるような訓練をして脳の働きを高め、さらに記憶力を保つ努力を重ねることが大変重要であることがわかりました。
それには、高度な指の反復運動がもっとも有効であります。まさにソロバンはこの原理に合致した最適の手段の一つと言えましょう。 お金もあまり掛からず、計算能力を養うことができる上、頭も良くなるのです。ソロバンは単なる指の反復運動ではなく、眼あるいは耳から得た情報を大脳に伝え、 指に対して珠を動かす運動の指令が出され、最後に答えを書き位を定めると言う基準動作が正確にすみやかに繰り返されます。 このような高度の集中力が要求される正確な思考活動と関連させた手指の反復運動が人間の知能発達を促進するのは当然であります。
 また、人間の大脳は左右二つの半球からなり、話す、書く、計算するなどの論理的な左脳と、空間図形や想像力、音楽芸術などの情操的、創造的な右脳がお互いに助け合いながらそれぞれ独自の働きを分担しています。 日本人の特質は一般に左脳を良く使い、それに反して右脳は西洋人よりかなり劣っていることが指摘されています。ここで、珠算式暗算が注目されることになります。 珠算式暗算は、原理的にはソロバン珠を脳裏に浮かべて計算することから始まりますが、これには右脳の協力が必要なのです。 このようにして、珠算式暗算の練習を重ねていくうちに次第に右脳も活性化されることになります。 まさにソロバン学習は、熟練した指先運動を通して左脳を鍛え、さらに珠算式暗算の習得を経て両脳をバランスよく開発することができるのです。
 このような学習効果はソロバンのみが果たし得るものであり「ソロバンを習うと頭が良くなる」わけなのです。 しかし、ここで申し上げている「頭が良い」と言う意味は、知識が豊富に詰まった「学力」を指すのではなくて、学習によって知識を頭に詰め込む「能力」に優れているということなのです。 だから、「小さい子供達には、先ずソロバン塾に通わせて頭を十分に鍛えてください。そうすれば、学習効果も倍増しますよ」と申し上げたいのです。
 このように考えて参りますと、ソロバン学習はできるだけ早い時期からすべての子供たちに経験させ、大いに知能の発達を促進させるとともに情操面でも優れた子供達を育てあげることが必要と思われます。 物事の本質を正しく把握する論理性と創造性に富む右脳的直観力とあわせ備えた有為な若者達を育てるためには、どのようにソロバン教育を組み入れるのが最も効果的であるのか、 そろばん塾の先生方だけでなく、私たちみんなが真剣に考えなければならない大切な課題ではないでしょうか。
 最後に、これからは世界一の高齢化社会を迎える日本人として、健全で豊かな老後の生活を実現維持させて行くためにも、幼少時における脳の効果的な鍛錬が重要な前提となることを忘れてはなりません。

 








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